絵茶会にて私が出したお題で、間さんと鉄紺さんがW悟飯さんで『温泉旅行』という素敵な合作絵にしてくださいました。
 大変滾ったので絵とチャットでの会話をネタ元にさせていただき、作文を書いてみました。


ご注意書
・超化さん視点です。
・通常未来悟飯さん→超化未来悟飯さんは『悟飯さん』呼びで敬語。
・超化未来悟飯さん→通常未来悟飯さんは『悟飯』と呼び捨てでタメ口。
・あ、温泉旅行のはずなのに、温泉入ってません。あしからずご了承のほど。







温泉旅行の楽しみ方



 悟飯と俺と二人きりで温泉旅行に来た。

 本日世話になる宿に着いてチェックインすれば、さっそくと言った感じで仲居さんが浴衣を出してくれた。
 定番の紺や海老茶といった中から少し珍しい千歳緑を選ぶ。

「悟飯さんはそれですか? 渋くていい色ですね」
「ああかっこいいだろ? 悟飯は決めたか?」
「いっぱいあって迷ってます。どれがいいと思いますか?」

 今は外国からの客も多いからか、女性用の浴衣だとて結構な長身にまで対応している。
 もともと浴衣からしてフリーサイズな部分もあるし、悟飯が着れそうなのをいいことに淡いピンク地に桃柄の浴衣を薦めてみた。
 半分冗談だったのだが、ノリのいい仲居さんにも一緒に薦められ、迷った末に悟飯が手に取ったのはそれだった。

「女の子みたいでおかしくないですか?」
「平気平気。似合ってるって」
「そ、そうですか? ならいいんですけど」

 まあ旅の恥は掻き捨てとも言うし、珠にはこんな遊びもいいだろう?
 浴衣と揃いの丹前をそれぞれ合わせて、荷物を置いたら温泉街をそぞろ歩くことにした。


 
 宿からそう遠くない温泉街。悟飯が先ほどからいちいち土産物屋に釣られている。
 何に使うのか木刀や神風だの必勝だのと書かれた鉢巻。変な言葉がデザインされた各種Tシャツ。ご当地ゆるキャラのストラップ。どこにでもありそうな置き物に、名産品の漬物や菓子。
 店を冷やかして歩くにはネタに困らない。
 中でも悟飯は店先で一際目立つ、蒸気の上った四角い蒸篭<せいろ>で蒸されているお饅頭に熱心だった。
 あっちの店、こっちの店とひとつずつ買っては、餡子が熱いと言いながら嬉しそうにはぐはぐと頬張っている。

「おーい、その辺にしとかないと、いくらお前だって夕飯入らなくなるぞ」
「あ、はい。でも、」
「『トランクスに一番おいしいのを土産にするから』だろ?」
「はいっ」

 いい顔で笑ってくれるものだから、俺は悟飯とトランクスのどちらに妬いていいのかわからない。まあ結局どちらも大事なんだが。
 しかしこいつは店先でお饅頭を蒸かしている全部の店を試す気だろうか。



 どうにか悟飯ランキング『一番おいしいお饅頭』が無事決定し(帰る時に出来たてを買うらしい)、腹ごなしを兼ねた散歩がてら、近場の観光スポットをいくつか見てまわった。
 宿に戻って一風呂浴びればもう夕飯時だった。
 部屋に運ばれてきた膳は彩りも匂いも素晴らしく、味に対する期待が高まる。
 お決まりにまずはビールで、とグラスをカチンと合わせた。 



 悟飯の様子が少しおかしいと気がついたのは山菜を中心にした前菜を食べ終えた辺りだった。
 いつもより格段に陽気で口数も多い。
 酒も入っているし、旅先で浮かれてるのかと思ったのだが、よくよく『本日の夕餉』と書かれたメニューを確認したら、食前酒として出された小さなグラスに入った酒は地元名産の白ワインだった。

(そういえばこいつは日本酒以外にはめっぽう弱かったんだよな)

 自身は和でも洋でもどんとこい! といった性質な上、まあ酒量の方もザルなのであまり気にしていなかった。
 量が極少ないから、まだ平気なのだろうか。

「悟飯お前平気か?」
「なにがです?」
「酒。これワインだぞ」

 カツっと空になった小さなグラスを指で弾いてみせる。

「へーきですよ? 甘くておいしーです」

 少々舌足らずだが意外としゃんとしている、……気がする。
 なによりにこにこと嬉しそうな悟飯にまあ、もともと酒は強いし平気かと高を括る。
 しかしその認識は五分後に早くも危うくなることになった。


 何故だか悟飯に箸で料理を運んで食べさせている。
 しかも胡坐をかいた俺の膝に悟飯が横抱きにもたれかかっているという体勢だ。
 酔うと出る、悟飯の甘え癖。
 普段トランクスなんかにはお兄さんぶってるけれど、こいつは実は随分と甘えただ。
 しょうがないなと呟きつつも、実際は楽しかったりする自分が一番しょうがない。

「ほら」
「イカよりまぐろがいいですー」
「はいはいマグロね。中トロだぞ。ほらあーん」
「あー」
「どうだ?」
「おいしー」
「そりゃあ重畳」
「次は何がいいんだ?」
「甘えびー」
「甘えびな。了解」

 こうやって手ずから食べさせていると、雛に餌を与える親鳥の気分になってくる。
 まくまくと口を動かす雛は大変愛らしいかった。
 ふっと視線を横に流すと、浴衣の裾が大胆に乱れているのが目に飛び込んできた。
 つるりとした膝頭に洋服では晒されることのない内腿。
 張りのある肌は全体的にアルコールで温められて、いつもよりピンクがかっていて、なんとも扇情的だ。

「おい、裾っ!」
「へ?」
「割れてる。足見えてるぞ」
「へーきですー」
「いや平気じゃないだろ……」
「暑いんです」
「そりゃ酒結構入ってるからな」
「だからこのままでへーきです」
「……わかった」

 酔っ払いにはなにを言っても無駄だ、ということが。
 人生には強引にでも自分を納得させるしかない時がある。
 俺の場合はその大半が悟飯といる時だが、好きで一緒にいるので結局は甘んじて受けているということだ。
 まあ問題があるとすれば俺の理性がいつまで持つかということと、仲居さんにでも入ってこられたら洒落にならないと言うことだ。ああ、寧ろ洒落にするしかないか。
 酔っている悟飯はそんなことに頓着してくれそうにないだろうけどな。


 お造りに焼き物、煮物に椀やご飯と香の物etc。それから宿のお薦めの日本酒。膝の上で悟飯が強請るままに食べさせてやる。
 酔っ払いの要望に順序もなにもあったものじゃないが構わないだろう。
 そうして次に悟飯が選んだのは水菓子の苺だった。
 真っ赤な実は瑞々しくうまそうだ。指でつまんで緩く開いた口元へ運ぶ。
 大振りの苺は一口で食べきれず、二つにされた果実の汁が口の端を伝うのを指の腹で拭ってやる。

「おいし。悟飯さんもいちご」

 はい、と目の前に差し出された赤い実に面食らう。こういうところがほんとどうしようもなくなる。
 厚意をありがたく齧ると、甘酸っぱい味が広がる。
 二口目は苺を持つ指ごと口に入れて、指と指に流れる汁ごと味わった。
 苺と悟飯の指を堪能する俺を悟飯がぼぅっと覗き込んでいる。

「そんなにいちご好きなんですか?」
「ああ。おいしいのは好きだよ」

 酔って潤んだ眸で問いかけられて、そろそろ理性が焼き切れそうだ。
 このままおいしく頂いちゃおうかな、なんて不埒な考えが頭を過ぎる。
 けれどそんなことを知らない悟飯は俺の答えに破顔して、そのまますとんと眠りに落ちていった。

「あーあ……」

 惜しむ気持ちとほっとしたのが半々で。
 今はただ濡れた唇にキスを落とした。

「ごちそうさま。良い夢を」






 翌朝目を覚ますと隣に寝かせた悟飯の姿がない。
 部屋を見渡せば部屋の隅で何事か呟いている背中。

「悟飯ー? おーい、おはよー?」
「え? あ、! ぅ、わああっ!? ご、悟飯さんっ!? お、おはようございますっ!」

 肩をびくりとさせ、勢いよく振り返った悟飯の顔は真っ赤だった。もちろんアルコールのせいではない。
 鯉のように口をぱくぱくさせているのが面白い。

「お、おれ、」
「どうした?」
「俺っ朝風呂行ってきますっっ!」

 バスタオルを引っつかんで勢いよく部屋を出て行く悟飯。
 スリッパながら目を見張るスピードだった。

「あー……あの様子じゃ昨日のこと洗いざらい覚えてるな。って、まてよ……おいっ 悟飯っ! お前ちゃんと酒は抜けてるのかっ!?」

 ふっと昨日の素晴らしい酩酊状態を思い出して、温もりの残る布団から跳ね起きた。
 勢いのまま悟飯の後を追う。
 長く続く廊下の先にピンクの浴衣姿を発見した。
 悟飯は廊下の角を曲がろうとして――
 見事に転んだ。
 すってーんといった擬音がよく似合いそうだ。

「……ああ、うん。絨毯滑りやすいもんな。スリッパだしな」

 浴衣がいい具合に捲れて熊さんパンツを拝ませていただきました。
 きっと今日も楽しい一日に違いない。
 合掌。








おわっとけ。






 残念な感じの翌朝でごめんなさい。
 間さんと鉄紺さんのW悟飯さんは大変格好良くて可愛いのに、 お目汚し失礼いたしました。
 しかし私、初めてまともに書いた飯飯がこれでいいのでしょうか。




 ―ちゃっかり管理人コメント― 
エニシさんありがとうございました! すっごいすっごい顔がにやけます^^
舌たらずとか、小説の未来さん極限に可愛いなあ!
あの日盛り上がったネタを全部ブッこんでいただいた感じで、自分がご馳走様と頭を下げたい思いです。胸いっぱいです。
また是非エチャでご一緒して、沢山滾りましょう^^w