鉄紺さんの戀酔というパラレル漫画に出てくる、猿と犬な悟飯さんとトランクスに触発され(半)獣化な二人。
未来悟飯さん→猿 トランクス→犬(長毛種)なイメージでお送りします。
要は犬なトラを悟飯が構ってるだけの会話文です。
■毛皮
悟飯の目の前をふさふさの尻尾が右へ左へ揺れている。
(ふさふさだなあ)
(気持ち良さそうだなあ)
「……何するんですか」
「へ?」
「勝手に握らないでください」
青空を映した眸に睨まれて、悟飯ははじめて自分の手がふさふさの尾を握っていたことを知った。
「あ、ああ。すまない」
手の力を緩めれば、するりと尾は逃げていってしまった。
「……」
「……」
無遠慮な手からは開放されたものの、またしても猿の妖<あやかし>であるという、男の視線はトランクスの尾を追ってくる。
「まったくなんだっていうんですか……」
「や、ふさふさだなって」
「だからなんですか」
「触っては駄目だろうか?」
ふいっと横を向いたトランクスに、悟飯はめげずに声をかける。
(もしかして俺が勝手に握るなと言ったから、断りを入れたらいいとか思ってるのか?)
「……」
「…………駄目だろうか」
(これじゃあまるでお預けをくらった犬みたいじゃないか。こいつ猿じゃなかったのか。犬は俺の方なのに)
「……強くは握らないでください」
「わかったっ!」
「うわっ!?」
いきなりぶつかってきた相手にぎょっとする間もなくトランクスは押し倒された。
「な、なにすっ……――ひっ!?」
躯を弄<まさぐ>る無遠慮な手に喉が鳴った。
(こ、こいつ、まさかっ!?)
「ふっかふかだなあ!」
良からぬ事を企んでいるらしい相手に、かっとなり牙を向けたところで能天気な声が耳に届く。
「は、?」
(ふかふか?)
「…………俺の、毛皮?」
押し倒されたまま目を開ければ、すぐ傍にきらきらと夜闇の眸を輝かせる男がいて、無骨な手がトランクスの長い毛並みを撫でさすっていた。
「ほんとうに君の毛皮はすばらしく気持ちいいなっ」
(なんなんだこいつ……)
他人に触られるのなんて大嫌いなはずなのに、どうにもこれ以上拒絶できない。
ふざけるな、と怒鳴りつけて喉元にがぶりと噛み付いてやればいいのに。
「まるで舶来の天鵞絨みたいだ!」
トランクスはがぶりとやる代わりに、くたりと力を抜いた。
大きな手を悪くない、なんて思ってしまったトランクスは、その後抱きかかえられるようにして、全身を悟飯の気の済むまで撫でられてしまい、自分の選択を後悔することになるのだった。
(ものには限度ってものがあるだろう!?)
おしまい
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